まつだなおゆき
松田直之さん
- 1984年年生まれ
- 埼玉県秩父市出身
秩父を離れ、システムエンジニアへ
私は大学進学を機に秩父を離れましたが、将来の目標や学びたいものが明確でないまま学部専攻してしまい、大学時代は悶々とした日々を過ごしていました。その後、いろいろな葛藤の末、思い切って大学を中退し、しばらくはフリーターとしてアルバイトをしていました。あるとき、たまたま友人の家でプログラムの本を読んだ際、もともと好きだった数学の考え方に近いプログラムにとても興味がわき、迷うことなく職業訓練校に入って半年間プログラムの勉強をしました。卒業後は、ベンチャー企業でシステムエンジニアとして7~8年ほど働きました。
秩父にUターンしたきっかけ
秩父を離れてからも1~2か月に1度は家族や友人に会うため秩父に帰って来ていました。私の心の中には常に秩父があり、いつか秩父に戻りたいという思いがありました。妻にもその思いを伝えており、実際に秩父に連れてくると、妻は秩父をすごく気に入ってくれました。東京に近いというのも魅力だったようです。そんな中で妻が秩父市の地域おこし協力隊に採用されたことが一つのきっかけとなり、2019年3月に秩父にUターンしました。
秩父から東京への通勤生活を経て、フリーランスへ
Uターンしてからも半年ほどは、秩父から東京の品川まで2時間半ほどかけて通勤していました。秩父から池袋までの1時間半は特急の指定席に座れるため、通勤時間というよりは自分一人の自由時間ととらえ、英語の勉強をするなど有意義に過ごすことができましたが、池袋から品川までの満員電車はきつかったです。
その後、2019年10月にフリーランスとして独立しました。それまで会社が全額負担してくれていた交通費は自己負担となりましたが、その代わり秩父は家賃が安く、駐車場代もかからないため、それをデメリットとして感じたことはありません。
テレワークという働き方
現在は週5日間、自宅でテレワークをしています。プログラム開発はパソコン一つあればできる仕事なので、自宅でも何ら支障はありません。毎朝、寝室から作業部屋に出勤しています(笑)。開発者同士のコミュニケーションについても、今はそのためのツールが充実していて、スムーズなコミュニケーションをとることができます。インターネット環境も今は多くの家庭に普及しています。会社としてプライベートなネットワークを用意する必要はありますが、これも普及しているシステムを利用することで可能になります。私は自宅に作業部屋がありますが、そうした場所が確保できない場合は、最近増えてきているワーキングスペースを利用する方法もあります。秩父にもいくつかワーキングスペースがあり、WiFi環境が整っている喫茶店やカフェなども多くあります。実際に東京のオフィスに行って説明しなければならない場合もあるため、物理的に東京に近いことも重要です。自然の中で働きつつ、必要に応じてすぐに東京へ行くことができる。こうした条件を満たす秩父は、テレワークする上でのメリットが大きいと思います。
テレワークは自宅で仕事ができるというメリットの一方で、オンとオフの切り替えが難しいという問題もあります。そこで、解決策の一つとして自宅の外に作業できる環境をつくり、本当に集中したい場合はそちらを利用するということも考えています。
まもなく子どもが産まれるため、テレワークをしながら子どものそばにいられる時間を増やしたいと思っています。子育ても妻だけに任せるのではなく、私も積極的に関わっていきたいです。
秩父のメリット・デメリット。秩父の未来への期待
かつてはライブハウスも、映画館も、気に入った服を買えるお店もない秩父は嫌だなという思いがありました。しかし、一度秩父を離れて戻ってきた今は、逆に秩父にはいろいろなものがあるように感じます。秩父のメリットは、やはり東京に近いながらも自然に囲まれた環境で豊かな生活が送れるところです。一方のデメリットとしては、音楽や映画が好きな私にとってライブハウスや映画館に気軽に行けないというところでしょうか。
未来の秩父は、まず子どもが元気に暮らせる街、子育てしやすい街になってほしいと思います。産婦人科などを充実していくことで、子育て世代の人がもっと移住して来られたらいいなと思います。
また、秩父にもっとたくさんの魅力的なお店ができたらいいなと思います。私はシステムエンジニアとしてホームページの作成やシステムを構築することができるので、そういった面で貢献していきたいと思っています。
地域社会・人とのつながり
私の実家のある秩父市宮地町は秩父夜祭の屋台を所有しており、私の両親や叔父が昔から行事役員として関わっていることもあって、東京にいた時も毎年夜祭の際には屋台を曳くために戻ってくるというのが習慣になっていました。今から5年ほど前には兄とともに囃子手として屋台に乗る機会があったのですが、屋台の上から普段は見ることのできない景色を見ることができ、とても感動したことを覚えています。特に秩父神社を出発し、本町の交差点を曲がった後の一直線の道路に大勢の観客が詰めかけているのを見たときは、これだけ多くの人たちが見に来てくれているのだと実感することができました。だんご坂を上るときには、花火を正面に見て「ほーりゃい」と声を出す。例えれば、大きなコンサート会場で歌うアーティストのような体験だったと思います。
また、秩父高校で教師をしている兄からの誘いで、自らの社会経験を生徒の前で話す機会がありました。普段なかなか接することのない高校生と触れ合うことができ、貴重な経験となりました。後に兄から生徒それぞれが自分の進路を考えるきっかけになったと聞き、少しは何かの役に立てたのかと嬉しく思いました。
移住者とのつながり
秩父地域の「移住者の会」に何度か参加したことがあります。これは秩父に移住してきた人と秩父にもともと住んでいる人との交流会ですが、ここでいろいろな方と知り合うことができました。私が参加したときは30名程度の方が参加しており、30~40代の方が多いかなという印象でした。秩父が好きで移住してきた人たちを中心に情報交換したり、悩みを相談したりしています。秩父での生活をとてもポジティブに楽しんでいる方が多くなってきたなと感じます。
プライベートの過ごし方
朝起きて窓を開けると周りに山が見える。こうした風景に自然に囲まれた中で生活することの喜びを感じます。自宅近くに「カルネ」という喫茶店があり、そこでコーヒーを飲むのが私の大事なオフの過ごし方です(笑)。趣味としては、フットサルサークルで月に数回活動しています。以前はドラムやギターを演奏していたのですが、これから秩父でもトライしていこうと思っています。秩父でのテレワークという働き方を通じて、徐々に生活基盤も安定してきており、とても充実した毎日を過ごしています。地域の人との交流も増えつつある中で、自分はこれからこの街のために何ができるだろうかと日々考えています。
取材場所
ギャラリーやワーキングスペースを運営している「多豆」様にご協力いただきました。